サニーを見てると、この真っ白な毛はどこから来たんだろうと思うことがある。調べてみたら、これは偶然じゃなくて、ある事故がきっかけで「意図的に選ばれた色」だった。
舞台は19世紀のスコットランド西海岸、アーガイル州のポルタロック。マルコム家という一族が、代々テリアを飼育していた土地。当時この地域にいたテリアたちは、今のスコティッシュ・テリアやケアーン・テリア、スカイ・テリアなどと同じ「ハイランド・テリア」という括りで、毛色もさまざまだった。白い個体もいれば、麦わら色(ウィーテン)や赤茶色の個体もいる、という状態。
転機になったのが、マルコム大佐(エドワード・ドナルド・マルコム)の狩猟中の事故。飼っていた麦わら色のテリアを、キツネと見間違えて誤って撃ってしまったと伝えられている。この痛ましい出来事のあと、マルコム大佐は「もう二度と同じことが起きないように」と、白い毛色の個体だけを選んで交配するようになった。野原でひと目で自分の犬とわかるように、という実用上の理由から白が選ばれたということになる。
面白いのは、当時のスコットランドには「白い犬は他の色より劣っている」という迷信めいた偏見があったらしいこと。それでもマルコム大佐は白い個体にこだわり続けた。今、サニーのトレードマークになっている真っ白な毛は、そういう逆風の中で意図的に守られてきた色というわけ。
この頃、マルコム大佐の犬たちは「ポルタロック・テリア」と呼ばれていた。ただ、マルコム大佐自身は自分の名前や領地名が犬種名として残ることを望まなかったらしく、もっと広い地域を指す名前が模索された。そして1907年、イギリスのクラフツドッグショーで正式に「ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア」という名前が認められた。スコットランド西部(ウエスト・ハイランド)というエリア全体の名を冠した、地域みんなのテリアという位置づけになったわけだ。
普段何気なく「白いのが可愛い」と思って見ているこの毛色に、こんな背景があったとは正直知らなかった。サニーが白いのは、100年以上前にひとりの人が下した「もう二度と失いたくない」という決断の結果なんだと思うと、いつもの散歩の見方が少し変わる気がする。

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